2008/04/29

HANA-BI

部屋を掃除していたらHANA-BIのDVDが出てきた。買ったものではなく、WOWOWで放送されたものをVHSテープに録画したものをパソコンで録画してDVDに焼いたものである。だから画面のハシにヘンな線が入っている。しかし、この映画を見ているときにそんなことは気にならない。この映画は、そもそも武自体がそういう人間なのだが、見事に絶望を描いている。武は絶望を体現している男である。同僚が殺されたからといって犯人をぶっ殺していいわけでもないし、銀行強盗して殉職した同僚の遺族を助けることが許されるわけでもない。それは、善悪の問題ではない。合法違法の問題でもない。心情の問題である。こんな見事な絶望は現実にはあり得るものではない。こんな生き方をしたら狂人である。ただの極悪人である。しかし、そんな生き方をしている彼は全く幸福ではない。毎日滅私の精神で我慢を重ねて生きている人の方が、おいしい食事を味わいささやかでも暖かな家庭の団欒を楽しみぐっすり眠っていることだろう。しかし彼は何の得にもならないことをして、自他をともに傷つけ破滅の人生を歩んでいる。いったいなぜそんな事をするのか。

武の描いた絵はどれも乾いていて冷たくて、これまた絶望した絵である。美しいね、すばらしいねと人に言わせることを拒んでいる絵である。たとえるなら、愛する人や子供に何かをねだられても何を買ってやることもできず、空っぽの財布を振っておどけるような、そんな絵である。

そういうときに、人はあきれて、愛想をつかして、怒る気もなくし、逆にかわいく思えてきたりする。そういう映画である、HANA-BIは。