2009/03/26

Jazz at Massey Hall

私は一時期Jazzを研究していたことがあった。
メインはマイルスデイビスで、彼のめぼしい作品はほとんど聴いて、自伝も読んだ。
でも、Jazzのアルバムの最高傑作はときかれたら、 massey hallと答えるだろう。
この作品は契約の関係で名前が出せないらしいのだが、チャーリーパーカーの代表作である。

いきなり始まるperdidoという曲。
ざわついた観客の声となんだかだらけた退廃的な雰囲気。
最初に吹いているのはチャーリーパーカーだと思う。別に誰でもいい。

これが、もうヤケっぱちというか、何もかも捨てたような、終わってしまった感があって、
自分が疲れてどうでもよくなったようなときに脳裏によみがえってくる。

ただし、このアルバムは1曲目以外はあまり好きではない。
マッセイホールの録音でないものやオーバーダブなどがあるらしいし。

でも、それを差し引いても、1曲目がすばらしいので名盤なのである。

2009/03/22

山本周五郎 「赤ひげ診療譚」

山本周五郎の3冊目。前作2冊よりは、普通の小説らしく、テレビの時代劇を思わせるような展開もあった。医者とその弟子となると、「破れ傘刀宗」のようだ。実際数人の相手を叩きのめす場面が出てくる。刀で斬りこそしないが。

共通の舞台でのオムニバス的な構造と、ダメな奴、狂った奴が多く登場するのは、「青べか」や「季節のない街」と同じ。これがなかったら、ほんとにただの時代劇の脚本になっていただろう。

頑固で情熱家で地位や名誉を求めないという、黒澤明が好きそうな話だ。映画は見ていないのだが、途中から去定はすっかり三船敏郎の姿をとってしまった。

この作品は、ちょっときれい過ぎるというか、お説教臭いというか、時代劇や映画の脚本っぽいのが物足りない。

2009/03/15

まあだだよ

この映画は確かTVでCMをやっていた。所ジョージがまーだだよ!と言ってみんなを先導しているシーンが記憶にある。
私は全く興味がなかった。クロサワクロサワっていうけどそんなにたいしたもんかね?と思っていたくらいだ。

最近、クロサワ映画がやたらと放送される。日本映画チャンネルやNHK BSで、何度も何度も。
あまりに有名なので、特に好きというわけでもないのだが、ほとんどの作品を既に見た。

まあだだよは初めてである。

冒頭のシーン。
教室に、退職することになった教師が入ってくる。すると、教室に煙が漂っている。
「誰かタバコを吸ったな?」とは言うが、叱りはしない。大学なのだろう、タバコを吸うこと自体はかまわないが、
教室では吸ってはいけないことになっているようだ。

教室は静まり返っていて、生徒たちは全員、教師のほうを見ている。
肘を突いたり腕組みをしたりしている者もいない。
教師が動くと全生徒の視線がそれを追いかける。

ここで、もう違和感がある。
まず、学校の教室というのは、そんなに厳粛なものではない。
生徒なんかあっち向いたりこっち向いたりして、教師の顔なんか時々ちらちらと見るものだ。

なかには厳粛な学校、厳粛な教室もあったかもしれない。
しかし、もしそうなら、教室では禁じられているタバコなんかを、
教師が来る直前に吸うことなどないだろう。

そのクセ、先生は大切な事を教えてくれました、
なんて心から尊敬しているかのような事を一人が言うと、みんながいっせいに立ち上がる・・・

こういう、集団がみな意志を一つにして、
まるでマスゲームのように行動するシーンは黒澤映画にはよくあるが、
いつも気持ち悪さを感じるところである。

この教師というのは内田百閒だそうだ。
ちなみに私はずっとヒャクモンだと思っていたが、よくみると耳ではなく月である。
もともとは間だったのを、わざわざ閒に変えたそうである。
彼の名前は何度か見聞きしているが、作品を読んだことはない。

なんてことや、それを演じた松村達夫が2005年に90歳でなくなったことや、
彼の演じたどですかでんの姪の女に手を出す役は最低な男だったが名演だったなとか、
先生の奥さん役は今日経で履歴書を連載している香川京子なのかとか、
そんなことを調べつつ1時間くらい見たが、途中でやめた。

何で人が宴会しているシーンを延々と見なきゃならなのか。
こんな映画、売れるわけないよ。よく作ったね・・・。

2009/03/07

コーヒーアンドシガレッツ

これも何度か見た映画で、彼が得意なオムニバス形式である。
なかでも傑作なのはcousins?である。
今まで何度か見ているがニヤニヤする程度だったのだが、
今回は手でひざをたたくほど笑った。
この話ではジャームッシュは完全に笑わしにかかっている。
正面から。

あと、特に何の用もないのに電話してきた男と会う話もおもしろい。

これをジャームッシュの最高傑作としてもいいかなと思った。

フルメタルジャケット

またフルメタルジャケットを見た。
何回目だろうか。なんといってもデブ(private pile)の狂気がこの映画のポイントであるが、
彼をあのような行動に駆り立てたのは軍曹ではなく周囲の同僚達、特にjokerなのではないかと思った。
あの話が実話であったかどうかは知らないが、おそらくあのような事件は過去にあったと思う。
しかし、軍曹の罵倒だけで彼があのように狂気に至ることはない。
多分、jokerは彼に対して、あの軍曹はちょっと言いすぎだ、だの、オマエは決してダメな奴じゃないだの、
言っていただろう。しかし、彼もリンチには参加している。
デブは、自分のダメさを自覚していたはずだ。こんな自分では戦地に向かえない、どうしようという不安があったはずだ。
しかし、それに対して、人間にもいろいろ個性がある、だれもかれもが戦士に向いているわけではない、とか、
戦争は国家のエゴだとか、そういう甘い言葉を聞かせてしまったら、
どうしてもその甘い言葉のほうに流れてしまうのが人間である。

彼には射撃技術という長所があった。
あれは彼が軍曹を恨んで殺害しようという意図で射撃に情熱を注いだというのではなく、
ただ才能があっただけだろう。

jokerが彼を慰めなくても、彼は軍曹に射撃の腕を認められて、それまでの屈辱が一気に晴れたはずだ。

しかし、彼はjokerの甘い言葉に自身の心情を乱され、狂気に至った。
最後にjokerを撃たなかったのは、彼にやさしくしてもらったからではない。
彼は殺すにも値しない男でしかなかったのだ。

2009/03/05

中丸明 「好色 義経記」

「好色 義経記」 中丸明

この作家はバカですね。おもしろく読んだけど。
夕刊紙の風俗レポートみたいな文体でした。