2009/09/21

Limits of control


ジャームッシュの新作公開をふとしたことで偶然知った。
あまり大々的に宣伝されないし上映館も少ないのでいつも見逃してしまうが。
上映回数も少なく、昼1回であとは夜2回などが多い。

張り切って見に行った初回。5連休の初日。
なんだこれ?
あの饒舌なイザックが全然しゃべらず、わずかに英語をあいづち程度に話すだけ。
これがひとつのジャームッシュのギャグか。

冒頭のシーン、スペイン語を話すかと聞いた後、フランス語で話す。
イザックがフランス語を話すことはイヤというほど知っているので、
それをわざわざ訳しているのがこれまたギャグなのかとニヤリとする。

だが、そんなことで笑っている場合ではなかった。

ストーリーはほとんどない。
20ページあったとかいう話だが、1ページで済みそうなくらいに、ない。
いろんな人物が入れ替わり立ち代わり現れて話をしていくのは、
コーヒーアンドシガレッツやブロークンフラワーズみたいな感じで、
彼の得意技というか、それしかできないのかなとちょっとうんざりする。

それぞれが話す内容があまり面白くない。
なんか、まともな芸術論っぽくて。
コーヒー・・・でイザックがやったように、用もないのに呼び出し、
本当に何も用がなかったとか、そういうのじゃないし。

俳優達はみな有名らしいのだが知っているのは工藤とビルマーレイくらい。
しかし後で最初にフランス語をしゃべっていたのがあの用もないのに呼び出した男の役だったことを知る。

ブロークン・・・に出ていた女優も出ている。
ストーリーとしてのクライマックスは、
暗殺を遂行するところだが、そのシーンには何の工夫もなくあっさり終わる。
そしてこのときに交わされる会話も、なんだか普通の暗殺シーンで交わされるつまらない会話である。

仕事が終わった後、スーツを脱いで空港を去っていくところで終わりか・・・
と思うと主人公がアップになる。
ん、まだなんかあるのかなと思ったとたんに、ブチっと映像が切れる。

途中でフラメンコのシーンがある。
これがとても素晴らしくて、さすがの寡黙な暗殺者も笑顔で拍手をする。

音楽といえば、Borisという日本人が曲を提供している。
「サイケデリック・ノイズ・メタル」とかいうジャンルに分類されるらしい。

これが、あまり良くなかった。
デッドマンのニールヤングを意識したような、
あとは逆回転とかをつかったのはビートルズとかを思い出してしまう。

フラメンコとかシューベルトとか、もしくはもっとコテコテのブルースとかの方が
よかったんじゃないかと思う。

あとは、言葉。
「スペイン語を話すか」というセリフが10回くらいいろんな人物から語られる。
そして、Noと答えると、英語で話しだす。
一部、日本語、たぶんヘブライ語も出てくる。痰を吐くような発音で、アラビア語かヘブライ語だとわかる。

海外の作品では、小説などでもよくフランス語や「ドイツなまりの英語」とかが出てくるが、いつもそれはどうでもよくて「何を言っているか」ということを考える。

しかし今回はこの違いが終始まとわりつくので無視するわけにはいかない。

英語というのはプラクティカルな言葉で、
フランス語やスペイン語を聞いていると英語は無味乾燥なつまらない言葉に感じる。

大好きなジャームッシュなので、評価が気になって、海外のレビューまで確認した。
どこまで本当に「わかって」いるのかは疑問だが、意外に好評である。

私はわけのわからない映画が嫌いではないし、ジャームッシュが好きなのも
そういうところなのだが、今回はストーリーが単純すぎて、
会話も特に難解なところがなく、それが気持ち悪かったのである。

しんぼる

すでに3回見た。こんなものをいい年して3回も見るのかと言われそうだが、見るたびに面白くなった。しかし、この映画はちょっと左脳を使いすぎなんじゃないだろうか。
何もない密室にガラクタのようにモノが出てくるような状況は見ていて気持ちよくない。
やっと出たと思ったら別の部屋。そしてどこまで登っていっても解放されることがない。
並行して進行するメキシコの話が救いだが、こちらにはあまり工夫がなく退屈だ。
予算が無いから密室にしたとかいうのがどこまで本当かわからないが、
最後の登っていくシーンの背景にニュースで見るような映像が流れるなんて、やめて欲しかった。
でも、スジは通っている。笑えたし。