2012/10/26

旧約聖書を読む (1) 創世記

まず創世記を読んだ。

創世記は何回か、けっこう熟読して読んでいる。
ただしいつもそうなのだが、どうしても系図を書かずにはいられず、時間がかかる。
5時間半くらいかかった。

だが、創世記は読み物としてとてもおもしろい。
いろいろな小説や映画などの題材となったエピソードもたくさん出てくる。

天地創造(1章)
私がもっとも印象に残っているのは車田正美の「リングにかけろ」で、この部分を朗読しながらジーザス・クライストという名の世界チャンピオンに剣崎がメッタ打ちにされるシーンだ。

失楽園(2章)
これはあまりに有名であるが、もっとも身近なところでは郷ひろみ&樹木希林の「林檎殺人事件」がある。「アダムとイブが林檎を食べてから・・・・」というフレーズがあるが、アダムとエバ(日本聖書協会の1955年版ではこう表記される)が食べたのは「善悪を知る木の実」である。

このことにより、「裸が恥ずかしくなり」、「蛇が腹で這い歩くようになり(ということは足があったのか)」、「女の産みの苦しみが増し」、「(男は)額に汗してパンを食べる」ようになった。

カインとアベル(3章)
なぜカインがアベルを殺すほど憎んだのかはいまひとつよくわからない。「弟の番人でしょうか」というセリフはたしか、映画「エデンの東」でジェームスディーンが言っていた。

ノアの箱舟(6章~)
箱舟(と思われる痕跡)が見つかった、ということは過去に何度かあったようだ。何かの象徴のようにも思える話であるがリアリティを感じさせるのは箱舟のサイズまで指定されているところである。「箱舟の長さは300キュビト、幅は50キュビト、高さは30キュビトとし、箱舟に屋根を造り、上へ1キュビトにそれを仕上げ、・・・」。とりあえず30mm, 5mm, 3mmの直方体を描いてみるととても細長くて「船」という感じではない。「キュビト」を調べると50センチ前後ということで、換算してみると全長150メートル、幅25メートル、高さ15メートルくらいということになる。
このときにノアの家族以外の人類が滅び去ったとすると、「カインの末裔」は存在しないことになる。

バベルの塔(11章)
人が天に到達するような塔を建てようとしたのを見て、「主」が言葉を乱した。人間の言葉が多様なのは、それぞれ独自の発展をしたためだからではなく、通じないように乱されたのである。外国語の学習が困難なのも無理はない。

イシマエル(16章)
メルヴィルの「白鯨」の主人公というか語り手の名前がイシマエルである。私が読んだ翻訳では確か「イシュメイル」となっていた。

ソドムとゴモラ(18章)
この地でどんなことがおこなわれていたかという記述はほとんどないが、「み使い」がソドムを訪れたときに町の人々が「彼らを出しなさい」とロトに言い、ロトが「まだ男を知らない娘を差し出すから」というところで、なんとなく想像がつく。

イサク献祭(22章)
アブラハムの息子イサクを供え物として捧げよという神の試み」にアブラハムは従う。イサクを殺そうとしたその瞬間に神にとめられ、彼は祝福される。

「ジェイコブズ・ラダー」(28章)
「ジェイコブ」というのは「ヤコブ」のことである。「時に彼は夢をみた。一つのはしごが地の上に立っていて、その頂は点に達し、神の使いたちがそれを上り下りしているのを見た。」とある。私はこの映画は見ていない。

イスラエル(32章)
イスラエルというのはヤコブの後の名前である。彼が旅路で神のみ使い(?)と「夜明けまで組打ち」してヤコブに勝てなかったということがあり、そのみ使いに「イスラエル」と名のるように言われる。「神と戦う」という意味である。ただ、戦うといっても戦争とか殺すとかいうことではなく、「組打ち」である。

「ヨセフとその兄弟」(37章~)
トーマスマンの小説。これも読んでいないが、ヨセフのエピソードは波乱万丈かつ感動的である。ヨセフが死んだところで創世記が終わる。ただし、いかにもヨセフが主流の人物のように見えるが、イエス・キリストに連なるのはヨセフではなく、ユダの血統である。

オナニー(38章)
オナンという人がいた。兄が死に、子を残すために兄の妻と寝るのだが自分の子にならないという理由で「地に漏らし」、それにより「主」に殺される。これが「オナニー」の語源だそうだ。


・・・という感じでおもしろく読めるのが創世記だが、不可解なところもたくさんある。

たとえば「長男の不遇」である。カインの供え物が顧みられないのを始めとして、双子のエサウとヤコブでヤコブがほとんど詐欺みたいなやり方で長子権や父からの祝福を奪うところ、双子のペレヅとゼラで弟のペレヅが先に出てくるところ、ヤコブ(イスラエル)の12人の息子達で末っ子のヨセフが愛され祝福されるところなど。


エジプト人がまるで異民族のように書かれているが、彼らも大洪水を経たあと再スタートしたノアの家族の子孫のはずだ。やはり「のろわれよ」と言われたハムの子孫なのだろうか?
そもそも「カナンはのろわれよ」という理由もよくわからないが。ハムの子孫にはペリシテびとがいる。カナンびとは滅ぼされるソドムとゴモラに住んでいた。