彼はくまのプーさんにおいて、私たちを物語と現実世界のあいだに行き来させる仲介者である。
私はその挿絵とともに、強烈に覚えている。
クリストファーロビンが、くまのぬいぐるみの手だか足だかを持って、
それをひきずって階段を登っている絵である。
そのぬいぐるみがプーさんである。
あのかわいいプーさんを、クリストファーロビンはそんな風にあつかっていたのである。
そしてことあるごとに「ばっかなくまのやつ!(Silly Old Bear!)」と言うのである。
そして数々のエピソードは、おそらくクリストファーのおじいさんである作者が語る話である。
今思い出した。
私は高校生の時に女の子を部屋に連れてきたことがある。
最初で最後の事だ。
そのとき、彼女は私の本棚を見て、くまのプーさんを見つけて笑った。
「かわいい」とかなんとか言って。
そういう位置づけなのだ、くまのプーさんは。
でも、本当は、そんな「かわいい」と笑うような本ではない。