新調文庫の「Xへの手紙・私小説論」に収録されている最初の作品である。
この文庫本は「様々なる意匠」を読みたくて買ったもので、とりあえずそれだけ読んで放ってあったものだ。
今日、外出中に時間があって読んでみたらおもしろかった。
小林秀雄というのは評論家で、論説文を書く人だと思っていたが、この作品は論説ではない。
小説というよりは、散文詩のように感じた。
文章は淡々とした描写が続いて、筆者のポリシーとかメッセージのようなものは全くといっていいほど見えない。
とくに劇的な情景が描かれるわけでもない。
大どんでん返しがあるわけでもない。
だが、私はこの短い作品を読んでいて心地よさを感じた。こういう文章を書いてみたいと思った。
「すべらない話」というテレビ番組があるが、「オチの無い話」というテーマで、みんなが淡々と描写したらおもしろいんじゃないか、などと思いながら読んでいた。