2024/04/08

TATTOO<刺青>あり (1982)

高橋伴明監督、宇崎竜童主演。

1979(昭和54)年におきた銀行立てこもり事件を題材としているが、事件そのものでなく事件にいたるまでの主人公を描いており、猟銃を持って銀行に乗り込むところまでは描かれているがその後立てこもり射殺されるまでは描かれていない。

この事件があった時私は小学生だったが、人質を裸にしたとか人質により人質の耳を切り落とさせたとか、最後射殺されたとか、報道された犯人のいでたちの異様さとか、ちょっと変わった名前とか、よく覚えている。

犯人(Aとする)の生い立ちなどについてはかなり詳しく判明しているようで、本も出ている。15歳の時に強盗殺人を犯したが少年であることから比較的短期間の服役で出所し20歳で観察処分を終えている。

水商売やヒモなどで生計を立てていたようだが極貧ということもなく、金遣いは荒いがそこそこの暮らしをしていたようだ。また、知性も教養もない欲望におもむくままに生きていた人間のようなイメージだったが、読書家であったり借金の返済には義理堅く几帳面だったりと、粗暴なだけの人間ではなかったようである。

銀行強盗を思い立ったのはカネに困ったということだけではなく、30歳までにデカいことをやってやるという意識もあったのだという。

どこまで本当だかわらないが、暴力団組長暗殺未遂を犯して惨殺されたBの愛人だった女がBの死後、Aの愛人となっていたのだという。

映画ではその女性をモデルとしたと思われる女性(関根恵子)が登場するが、一時愛人のような関係にはなるが、別れた後Bの女になっていて、その時にはその女はAに心はなかったという風に描かれている。

Bの事件が起きたのは1978年7月で、この立てこもり事件が起きたのは1979年1月である。

映画では、新聞か何かでAがBの事件を知り、それにも触発されたように思わせるシーンもある。

私はAの事件もBの事件も知っていたが、こんなに短い間に、ほとんど同時といっていいくらいに、起きていて、しかもその二人に共通の愛人がいたというのは驚きだった。

あと、関根恵子はこの映画を撮った後に高橋伴明と結婚していたというのも驚きだった。彼らが夫婦であることも夫が映画監督であることも知っていたが、この映画の縁だったとは。

それから、この映画が作られたのが1982年で「竜二」が1983年である。背景となる街並みや画質がいい感じに鮮明過ぎないところなどが竜二と似た雰囲気がある。竜二はこの映画に影響を受けているのでは?とさえ思った。まあ、これは「ATGっぽさ」なのかもしれないが、私はほかにATGの映画をほとんど知らないので何とも言えない。