2023/09/25

死ぬまでに読んでおきたいもの

アンナ・カレーニナ

東海道五十三次

ドン・キホーテ

精神現象学


一度読んではいるがもう一度読み直してみたいもの

白鯨

カラマーゾフの兄弟


白鯨はできれば原文を全部読んでみたい。


あと、ランボーとヴァレリーの詩を原文で読んでみたい。

ボードレールも。



2023/09/11

読書しながら別のことを考えてしまう件

私はよくある。というか、ほぼ100%そうなる。

仕事で必要な資料を読む時などにはならないのだが、趣味というか余暇というか、特に必要のない小説を読むときにそうなる。

自分で好きで読んでいるのになんでそれに没頭できず余計なことを考えてしまうのか。そして、別のことを考えているのになぜ読み続けているのか。これが不思議なことである。間違いなく私はその本を読んで文字を追いページをめくってもいる。しかし頭の中では別のことを考えている。自分が過去に経験したこととか、誰かに言われた言葉を反芻してその真意を考えてみたり、その言葉によって感情を刺激されて怒ったり滅入ったり恥ずかしくなったりさえする。それは読んでいる小説そのものではないのだが間違いなくその小説を読むことによって生じる現象である。

そういう人がいないかなと思ってWEBで検索してみるとけっこういるようだが、そのことに対して否定的なコメントがついており、「どうすれば読書中に余計なことを考えないようにできるか」みたいなことを書いている人もいる。

集中力がないのだとか、読書する環境が悪いのだとか、いろいろ言われている。

私は読書中に別のことを考えながら文字だけ追っている、という状態も全く意味がないこともないように思っている。先ほど書いたように、その状態は間違いなく読書することによって起きている現象であり、何もしないで椅子に座っていたりベッドに横たわっているときに何かを思い出しているのとはまた異なる状態である。

こうなってしまうのは性格や意志の問題と考えてもどうにもならない。もっと明確な理由がある。それは単純に、読んでいる言葉の意味が分からないからだ。小説を読むときに皆さんはわからない言葉があったら辞書を引くだろうか?私は引かない。読めない漢字があってもとばして読み進む。地名や人名などの固有名詞が出てきたときにそれについて調べることもしない。それでも読める本はあるが、時代や地理が自分のすごしているのと異なる場合、つまり海外の古典文学を読む場合などに、それが積み重なっていくと曖昧な概念で頭がいっぱいになり、作者が意図したイメージと読み手である私の持つイメージが全く異なるものとなり、いつしか字面を追うものの内容が把握できなくなり、気づいた時にはその情景がどこなのかこのセリフを語っているのが誰なのかどうしてそのような事態になっているのかなどがわからなくなっている。

あと、私は注釈がついていてもまず読まない。面倒くさいから。でも、読めない本については注釈も読んだ方がよい。注釈がついているのはだいたい翻訳もので訳者注のことが多い。私は訳者注について、その注釈の内容に疑問を感じることも多い。要は、あまり信用していない。ときどき、作者がなぜこんなことを書いたのかという意図まで説明していることがあるが余計なことを書くなと思う。しかし「読めない」場合は注釈に目を通した方がよい。

前に戻って読み直して理解できることもあるが、少し戻ってもわからない、あまりにわからないことが多すぎて読む気がうせてしまう。

こうならないようにするには、読書しながらノートをとるとよい。登場人物の名を書いておく。どの人物が重要なのかはわからないので、すべての人物について記録する。

印象に残った文章は書き写す。わからない言葉読めない言葉は辞書を引く。固有名詞も「そういう名前の何か」ですませず、調べる。今はインターネットがあるから、地名とか外国の固有の料理の名前とか人名とか、すぐに情報が手に入る。

こういうと、「長編小説を読むのにそんなことをいちいちしていられない」と思うだろう。

しかし、不思議なことにこのノートを付けることは、小説を読み進めていくうちにだんだん少なくなっていき、そのうちノートを付けなくても、不明な言葉を辞書で引かなくても読めるようになる。

私はトーマス・マンの「魔の山」とトルストイの「戦争と平和」を読むときにこの方法をとったのだが、どちらも途中でノートを付けることはほとんどなくなった。ただ、両方とも長いので、読んだ章の数字と、その章で何があった、だれが出てきた、程度はメモしていた。

 

読書しながら本に線を引いたり書き込みをしたりするのも、上の空になるのを防げるかもしれない。だが、私は本に線を引くことはまずない。やってみたこともあるが、線を引き始めるとやたらめったら引くことになり、また、線を引くと引いただけで読んだ気になってしまいかえって内容把握がおろそかになってしまうような気がする。

また、線を引くことの意味が、「感動した」「なるほど」「うまいことをいう」「意味がわからない」など多様になり、それについて色を変えたり波線にしたり点線にしたり、といったことをするのも、面倒だし、文章のリズムというのか、雰囲気というのか、そういうものが崩れてしまうような気がしてならない。


私は読書するときは、上の空になってもそのまま読み続けることにしている。完全に文章を理解できなくても、とりあえず読み進める。一言一句理解しないと読み進めないというような態度でいたら子供向けの童話や家電製品の説明書くらいしか読めない。

むしろ、自分が理解できない文章を自分の中に取り込んでいくことこそが読書のだいご味なのではないか。

そもそも、小説なんてある人が頭の中で作り上げたものである。もちろん、調査したり推敲したり、編集者などの校正を経たりしてはいるのだろうが、それだって人のしたことである。間違いもあるかもしれないし、話の進め方に無理があったり、説明不足があったり、作者の思い込みを読者に押し付けている場合もあるだろう。翻訳の場合はさらに翻訳がが作者の意図を取り違えていることがありうる。だから、わからないことがあってもあまり気にせず読み進めるべきだ。


2023/09/10

堀辰雄「風立ちぬ」

10年前に読んだという記事がこのブログにある。

自分でも「風立ちぬ」は読んだという記憶はあったのだが、どんな話だったか、どんな文体だったか、堀辰雄はどんな作家なのか、ということが全くと言っていいほど残っていないことに気づき、もう一度読んだ。

新潮文庫 平成25年118刷

110ページくらい。

堀辰雄は1904(明治37)年生まれ、1953(昭和28)年没

風立ちぬはサナトリウムが舞台で女性が病気で亡くなってしまう話である。
女性というのは恋人のような存在であり入院に付き添い父親とも対面するほどの仲である。
この話は事実に基づいていて、年譜を見ると婚約者であったらしい。
作中では付添人であるかのように描かれているが、この時堀自身も病気で二人で療養していたそうだ。

女性は亡くなるのだが、亡くなる描写はない。
症状が悪化して絶望的な状況になってきたことが描写されるところでいったん場面は転換し、
転換した後はすでに彼女が亡くなった後の日記形式である。

自分の婚約者が亡くなったという事実に基づいていてまだ30代前半であったばかりのことを書いているから無理もないが、非常に主観の強い、自分と女だけが隔絶されたような世界が描かれている。

一人称で語られたり日記形式だったりするものはよくある。ウェルテルなんかもそうだ。それにしても風立ちぬは主観が強く独善的とさえ感じた。

ちなみに歌謡曲やアニメのタイトルにもなっている「風立ちぬ」であるが、ポールヴァレリーの詩が出典である。

冒頭に原文が引用される。

  Le vent se lève, il faut tenter de vivre
  PAUL VALÉRY

そして作中は訳文で引用される

 風立ちぬ、いざ生きめやも。


「生きめやも」ってどういう意味?フランス語より不明。


(推量の助動詞「む」の已然形「め」に反語の意を表わす係助詞「や」、
詠嘆を表わす係助詞「も」の付いたもの) 「めや」の反語の意に詠嘆の意が加わったもの。
…することがあろうか、いやそんなことはない。どうして…でなどあろうか。

※万葉(8C後)一・二一「紫のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに吾れ恋ひ目八方(めやも)」
※古今(905‐914)恋一・五一二「たねしあれば岩にも松はおひにけり恋をし恋ひばあはざらめやも〈よみ人しらず〉」




これはどうやら誤訳のようで、本来の意味は「生きようとしなければならない」という生に対して肯定的な意味であり、堀辰雄の訳では「生きられようか(できない)」という否定的な意味になるそうである。


もしかしたら意図して本来の意味と違うように訳したのかもしれない。
もしくは、あまりに絶望していたので生きるべきというところを生きられない、と読んでしまったのか。

私も洋楽の歌詞などを自分の独特の解釈で「誤解」してしまうことはよくある。


ついでなので原文をコピーしておく。
残念ながら原文は理解不能、訳文を読んでもよくわからない。


LE CIMETIÈRE MARIN

Μή, φίλα ψυχά, βίον ἀθάνατον σπεῦδε, τὰν δ’ ἔμπρακτον ἄντλεῖ μαχανάν.
PindarePythiques, III.


Ce toit tranquille, où marchent des colombes,
Entre les pins palpite, entre les tombes ;
Midi le juste y compose de feux
La mer, la mer, toujours recommencée !
Ô récompense après une pensée
Qu’un long regard sur le calme des dieux !

Quel pur travail de fins éclairs consume
Maint diamant d’imperceptible écume,
Et quelle paix semble se concevoir !
Quand sur l’abîme un soleil se repose,
Ouvrages purs d’une éternelle cause,
Le Temps scintille et le Songe est savoir.

Stable trésor, temple simple à Minerve,
Masse de calme, et visible réserve,

Eau sourcilleuse, Œil qui gardes en toi
Tant de sommeil sous un voile de flamme,
Ô mon silence !… Édifice dans l’âme,
Mais comble d’or aux mille tuiles, Toit !

Temple du Temps, qu’un seul soupir résume,
À ce point pur je monte et m’accoutume,
Tout entouré de mon regard marin ;
Et comme aux dieux mon offrande suprême,
La scintillation sereine sème
Sur l’altitude un dédain souverain.

Comme le fruit se fond en jouissance,
Comme en délice il change son absence
Dans une bouche où sa forme se meurt,
Je hume ici ma future fumée,
Et le ciel chante à l’âme consumée
Le changement des rives en rumeur.

Beau ciel, vrai ciel, regarde-moi qui change !
Après tant d’orgueil, après tant d’étrange
Oisiveté, mais pleine de pouvoir,
Je m’abandonne à ce brillant espace,
Sur les maisons des morts mon ombre passe
Qui m’apprivoise à son frêle mouvoir.


L’âme exposée aux torches du solstice,
Je te soutiens, admirable justice
De la lumière aux armes sans pitié !
Je te rends pure à ta place première :
Regarde-toi !… Mais rendre la lumière
Suppose d’ombre une morne moitié.

Ô pour moi seul, à moi seul, en moi-même,
Auprès d’un cœur, aux sources du poème,
Entre le vide et l’événement pur,
J’attends l’écho de ma grandeur interne,
Amère, sombre, et sonore citerne,
Sonnant dans l’âme un creux toujours futur !

Sais-tu, fausse captive des feuillages,
Golfe mangeur de ces maigres grillages,
Sur mes yeux clos, secrets éblouissants,
Quel corps me traîne à sa fin paresseuse,
Quel front l’attire à cette terre osseuse ?
Une étincelle y pense à mes absents.

Fermé, sacré, plein d’un feu sans matière,
Fragment terrestre offert à la lumière,
Ce lieu me plaît, dominé de flambeaux,
Composé d’or, de pierre et d’arbres sombres,

Où tant de marbre est tremblant sur tant d’ombres ;
La mer fidèle y dort sur mes tombeaux !

Chienne splendide, écarte l’idolâtre !
Quand, solitaire au sourire de pâtre,
Je pais longtemps, moutons mystérieux,
Le blanc troupeau de mes tranquilles tombes,
Éloignes-en les prudentes colombes,
Les songes vains, les anges curieux !

Ici venu, l’avenir est paresse.
L’insecte net gratte la sécheresse ;
Tout est brûlé, défait, reçu dans l’air
À je ne sais quelle sévère essence…
La vie est vaste, étant ivre d’absence,
Et l’amertume est douce, et l’esprit clair.

Les morts cachés sont bien dans cette terre
Qui les réchauffe et sèche leur mystère.
Midi là-haut, Midi sans mouvement
En soi se pense et convient à soi-même…
Tête complète et parfait diadème,
Je suis en toi le secret changement.

Tu n’as que moi pour contenir tes craintes !

Mes repentirs, mes doutes, mes contraintes
Sont le défaut de ton grand diamant…
Mais dans leur nuit toute lourde de marbres,
Un peuple vague aux racines des arbres
A pris déjà ton parti lentement.

Ils ont fondu dans une absence épaisse,
L’argile rouge a bu la blanche espèce,
Le don de vivre a passé dans les fleurs !
Où sont des morts les phrases familières,
L’art personnel, les âmes singulières ?
La larve file où se formaient des pleurs.

Les cris aigus des filles chatouillées,
Les yeux, les dents, les paupières mouillées,
Le sein charmant qui joue avec le feu,
Le sang qui brille aux lèvres qui se rendent,
Les derniers dons, les doigts qui les défendent,
Tout va sous terre et rentre dans le jeu !

Et vous, grande âme, espérez-vous un songe
Qui n’aura plus ces couleurs de mensonge
Qu’aux yeux de chair l’onde et l’or font ici ?
Chanterez-vous quand serez vaporeuse ?
Allez ! Tout fuit ! Ma présence est poreuse,

La sainte impatience meurt aussi !

Maigre immortalité noire et dorée,
Consolatrice affreusement laurée,
Qui de la mort fait un sein maternel,
Le beau mensonge et la pieuse ruse !
Qui ne connaît, et qui ne les refuse,
Ce crâne vide et ce rire éternel !

Pères profonds, têtes inhabitées,
Qui sous le poids de tant de pelletées,
Êtes la terre et confondez nos pas,
Le vrai rongeur, le ver irréfutable
N’est point pour vous qui dormez sous la table,
Il vit de vie, il ne me quitte pas !

Amour, peut-être, ou de moi-même haine ?
Sa dent secrète est de moi si prochaine
Que tous les noms lui peuvent convenir !
Qu’importe ! Il voit, il veut, il songe, il touche !
Ma chair lui plaît, et jusque sur ma couche,
À ce vivant je vis d’appartenir !

Zénon ! Cruel Zénon ! Zénon d’Élée !
M’as-tu percé de cette flèche ailée

Qui vibre, vole, et qui ne vole pas !
Le son m’enfante et la flèche me tue !
Ah ! le soleil… Quelle ombre de tortue
Pour l’âme, Achille immobile à grands pas !

Non, non !… Debout ! Dans l’ère successive !
Brisez, mon corps, cette forme pensive !
Buvez, mon sein, la naissance du vent !
Une fraîcheur, de la mer exhalée,
Me rend mon âme… Ô puissance salée !
Courons à l’onde en rejaillir vivant !

Oui ! Grande mer de délires douée,
Peau de panthère et chlamyde trouée
De mille et mille idoles du soleil,
Hydre absolue, ivre de ta chair bleue,
Qui te remords l’étincelante queue
Dans un tumulte au silence pareil,

Le vent se lève !… Il faut tenter de vivre !
L’air immense ouvre et referme mon livre,
La vague en poudre ose jaillir des rocs !
Envolez-vous, pages tout éblouies !
Rompez, vagues ! Rompez d’eaux réjouies
Ce toit tranquille où picoraient des focs !