2018/11/28

斬、

塚本晋也監督

「野火」の衝撃がまだ記憶に新しい中、時代劇を撮るというニュースを聞いて絶対に観にいこうと思っていた。

公開日の翌日、渋谷で観た。

新宿で観ようと思っていたのだが、上映しておらず、やむを得ず渋谷へ行った。

なじみのない場所なのでタクシーで行ったが、ラブホテル街のような汚い場所だった。


冒頭は引き込まれた。

見慣れた映画にはない構図、非現実的なのだが強烈なリアリティがある、さすが塚本監督、と感じた。

上映時間は80分と最近の映画にしては短い。

それはよかった。


中盤から少し、興ざめする感じを覚えてきた。

観終わった直後はあまり気分がよくなく、駄作だとさえ感じた。


あそこはこうしたほうがよかった、あのシーンはいらなかった、
あのシーンは監督の自己満足じゃないのか、
などの思いがよぎった。

ラブシーンはみな寸止めだった。

それは当然である。


自涜シーンが出てくる。

そういう映画なのかな。


まあ、カタルシスを得て元気になるような映画なんかじゃないことは観にいく前からわかっていたことだし。



2018/11/03

陰影礼賛

谷崎潤一郎

この随筆は名作だと頭の中にあったのだが、内容をまったくと言っていいほど覚えていなかった。

読んでみると、忘れていたというより、明らかに読んでいない。

厠の話が出てくるが、こんな話を読んでいたら絶対に忘れないはずだ。


陰影礼賛は、たしか高校生の国語の授業で、一部をコピーしたものを読んだだけだと思う。

その一部だけを読んで感心はしたのだが、全部は読んでいなかった。

題名の通り陰影を、薄暗さの良さを書いているのだが、特にそれは建築について書かれていた。


これを読んだすぐ後に、たまたま出張で中国へ行った。

泊まったホテルは中国では最高級の立派なホテルなのだが、明かりが薄暗い。

自分の泊まる部屋へエレベーターであがって廊下を歩いているときに、

『あ、陰影礼賛だ。こういうことか』

と軽く驚いた。


廊下も暗いし、部屋に入って明かりを全部つけても物足りない感じがする。


外を歩いても、店などのあかりはついているのかわからないくらい微かだ。



もう慣れてしまったが、日本のほうが明るすぎるのだろう。