さいたまスーパーアリーナ。
開場は4時、最初の試合は5時からということで、
せっかくなので全部見ようと4時少し過ぎに駅に着いた。
トイレに行こうと思ったら長蛇の列。
あきらめてスーパーアリーナへ向かう。
The Whoのライブ以来だが、あれはたしか2008年だからもう14年も経つのかと感慨にふける。
人が多いがみんながスーパーアリーナへ行くわけでもあるまいと思っていたが会場につくとすでに大勢が会場入りしていた。
買ったチケットはアリーナのリングサイドB席。11万円。妻にはボクシングを見に行くとは言ったがこんな席のチケットを買ったことは内緒だ。
帝拳ジムの情報ではメインイベント以外に東洋太平洋とWBOのタイトルマッチがあるとのことだったが、4回戦、6回戦の試合もあり、さらにWBOタイトルマッチの後にもう一試合4回戦が行われた。
私の座った席は、リングから20列目くらいだろうか。下から見上げるような場所である。
こんな角度でボクシングを見るのは初めてだ。
もう30年前になるが、レパード玉熊が綾瀬にできたばかりの東京武道館でタイトルマッチをおこなったのを観たのだが、そのときもこんな位置だったろうか。
すべての試合をじっくり見た。テレビやyoutubeで見るのとは全然違う。
正直言って前の人の頭だったりロープなどが邪魔でちょっと見にくいのだが、
臨場感というか、迫力というか、そういうものは何にも代えがたい。
WBOタイトルマッチに勝った中谷潤人というボクサーを知らなかったのだが、まだ無敗ですばらしいボクサーで、有名らしい。
さて、ゴロフキンと村田の試合であるが、
まず、どうも村田の表情がさえない気がした。
リングの上にあった大きなディスプレイで見た会場入りする様子、控室の様子を見ても、なんだか気が沈んだような、よく言えば冷静で平然としているのだが、なんだかおびえたような、あきらめたような雰囲気さえ感じた。
いよいよ入場となって、会場は声を出すことが禁じられていたが沸いた。
村田はTシャツを着て入場してリングにあがるとシャツを脱いだのだが、
その体をみてなんだか痩せて肌の色が土気色のように見えた。
それは、その日おこなわれた5試合で見たどの選手にもないような不健康な色に見えた。
家に帰ってamazon primeの映像を見るとそんな風には見えないのだが、現地ではとにかく覇気がないというか、試合前なのに疲れているようで高ぶりも感じられなかった。
ゴロフキンは、やや年をとったなという感じはあるものの、オーラというか、みなぎるようなものが感じられた。
試合は序盤から村田が攻め、会場は沸いた。
ゴロフキンは下がりながら防戦一方のように見える。
2R終了後のインターバル時の様子は直接は見えにくかったのだが、
ディスプレイで見るとかなり疲労していて、まだ2Rが終わったばかりだというのに頭から水をかけられて髪の毛もグシャグシャになっていて、
あれ、もしかして負ける?
と思った。
ゴロフキン有利という評判だったが、私はカネロとの2回目の試合をyoutubeで観た印象と、その後それほど強い選手と戦っていないこと、ブランクが長いことなどからもしかして村田が勝つのでは?と思っていたが、
試合が始まるころにはゴロフキンが負けるわけはない、という風に思い始めていたのだが、やっぱり負けるかもしれないと思わせた。
村田は前に出るとともに、執拗にボディを打っていた。
しかしそのボディブローはほとんどトランクスのベルト部分にヒットしている。
ローブローじゃないかと思ったがレフリーは何も言わないしゴロフキンも抗議することもない。
会場はろくにヒットしてもいないのに村田が手を出してゴロフキンが下がるだけで歓声があがる。
だがゴロフキンは決して下がる一方にはならず、細かくパンチを入れ、かならず反撃してくる。
2R, 3Rは村田のラウンド、4Rも村田かなぁ、という感じだった。
たしか5Rだったと思うが、ついに村田のローブローが注意された。
(その前にも注意されたという情報があるが私が気づいたのはこの時が初めてだった)
そのあたりからボディブローがほとんど出なくなった。
そしてゴロフキンのパンチが当たる場面が増えてくる。
村田も被弾しながらも勇敢に前に出て反撃をするのだが、
明らかに疲労がたまっているのが分かる。鼻血も出ていたし
顔もカットまではいかないがあちこちすりむいている。
6Rか7R開始してすぐに、何かがピューンと飛んだ。村田のマウスピースだ。
そんなにもろに当たったという感じではなかったが、スパーンと打ち抜くようなパンチだ。
今はマウスピースが落ちるとすぐにレフェリーが止めて入れる。
これはヤバいなと思う。
(というか、自分の中ではゴロフキンがやっと実力を見せ始めたという安心感の方が強かった)
7, 8Rはロープに詰められて滅多打ちに近い状態となることもありストップされるのではと思った。
そして9Rついにダウン。試合終了。
twitterやyoutbueなどで試合の感想を見ると感動したという人が多かったが私は村田については果敢に立ち向かったことはすばらしいとは思うが、あまりいい状態ではなかったように見えた。
そもそも、今までの村田の試合について私はあまり評価していないというか、なんだか慎重に相手を選んで強い相手を避けてきたような、どこか別の世界で競技をしているような違和感というか物足りなさを感じていた。
おそらく彼自身、いつかはカネロやゴロフキンという「本物」と戦って見せたいという思いがあり、そしてとうとうそれが実現したわけだが、その結果はやはり世界チャンピオンと言ってもまた別格の存在であることが明らかになったという悲しさのようなものがあった。
会場はサーチライトのようなものがまぶしくて、ひさしのついた帽子を持ってくればよかったと思った。
またトイレが常時(もちろん試合がおこなわれていない時)行列ができているので、
今度このような機会があれば外ですましておこうと思った。
あと、場内は室温が低く、長袖シャツ一枚では少し寒いかなというくらいだった。リング上はライトが照っているからそんなに寒くはないのだろうが。
そしてリングサイドで見るというのは貴重な経験だったが、今度はやや上から全体が見下ろせるAとかBとかの席でいいかなと思う。