2009/03/07

フルメタルジャケット

またフルメタルジャケットを見た。
何回目だろうか。なんといってもデブ(private pile)の狂気がこの映画のポイントであるが、
彼をあのような行動に駆り立てたのは軍曹ではなく周囲の同僚達、特にjokerなのではないかと思った。
あの話が実話であったかどうかは知らないが、おそらくあのような事件は過去にあったと思う。
しかし、軍曹の罵倒だけで彼があのように狂気に至ることはない。
多分、jokerは彼に対して、あの軍曹はちょっと言いすぎだ、だの、オマエは決してダメな奴じゃないだの、
言っていただろう。しかし、彼もリンチには参加している。
デブは、自分のダメさを自覚していたはずだ。こんな自分では戦地に向かえない、どうしようという不安があったはずだ。
しかし、それに対して、人間にもいろいろ個性がある、だれもかれもが戦士に向いているわけではない、とか、
戦争は国家のエゴだとか、そういう甘い言葉を聞かせてしまったら、
どうしてもその甘い言葉のほうに流れてしまうのが人間である。

彼には射撃技術という長所があった。
あれは彼が軍曹を恨んで殺害しようという意図で射撃に情熱を注いだというのではなく、
ただ才能があっただけだろう。

jokerが彼を慰めなくても、彼は軍曹に射撃の腕を認められて、それまでの屈辱が一気に晴れたはずだ。

しかし、彼はjokerの甘い言葉に自身の心情を乱され、狂気に至った。
最後にjokerを撃たなかったのは、彼にやさしくしてもらったからではない。
彼は殺すにも値しない男でしかなかったのだ。