2008/10/24

HANA-BI

思い出したこと。

2回目か3回目に気づいたことなのだが、最初のシーンは主人公の西が、自分の車のボンネットに座って弁当を食っていた若者を殴るところである。その若者達は後日ナイフを持って復讐に来るのだがそこでも西は彼らをぶちのめす。すると今度は、彼の車に赤いペンキで、「死ね」とラクガキされる。

・・・

そして、西は最後本当に死んでしまう。

確認しようと思って、昔焼いたはずのディスクを探した。確か、WOWOWで放送されたものをVHSテープに録画し、それをスゴ録の外部入力から録画して、DVDに移動したものだ。

音楽がいい。絵もいい。

さて問題のシーンだが、「死ね」は車ではなく、車を停めていた場所に書かれていた。

この映画は神がかっている。
最初に見たのはベネチア(だっけ?)でグランプリを獲ったニュースを見てしばらくしてからで、近所のレンタル屋でVHSを借りた。
そのときはあまり感じるものはなかった。

だが、あるとき、何気なくテレビのチャンネルを変えていたら、銀行強盗帰りのタクシーが走るシーンが映った。どっかでみたなと見ているとHANA-BIだった。

それをきっかけに、何度か見直すことになるのだが、
そのたびに評価が上がっていく。

そして武の映画は全部見て、新作は公開されると劇場で見た。

それらの作品と比べると、HANA-BIの絵(映像)は、別人が撮ったように違う。
本質はあまり変わりがないかもしれないが、映像の撮り方とか構図とか、技術的なものが、洗練されている。

銀行強盗のときもそうだが、車がただ走るだけのシーンが美しい。
ほかに車がなくて一台だけ走るからかな。武の映画にはよく出てくるよね、車が一台ツーっと走っていくシーン。
チンピラの復讐は、話が少し進んでから挟まれる。
こういう、メインのストーリーとはあまり関係のないサブストーリーのようなものを挟むことも、最近の武の映画には減ってきたように思う。

まあでも、今指摘したことはみんな技術上のことであって、彼の映画の本質はそんなところにあるのではない。HANA-BIみたいな撮り方もやろうと思えばできるだろうが、あえてそれをせずに新境地を模索している。

マンガ家も、だいたい新人の頃はリアルに書こうとするがだんだんデフォルメされていくように、自然でリアルな描写から、抽象的な描写になっていく、芸術とはだいたいそういう風に成熟していくのではないだろうか。