朝倉海の試合を観るためにU-Nextのお試し契約をした。すぐに解約する予定だがどんなものが観れるのかなと映画のラインナップを見るとほとんど興味がわかないが、「砂の器」があった。
何度かドラマ化もされているが、映画が強烈すぎてどれも観ていない。観ようという気にもならなかった。あの作品がテレビにおさまることなど想像もできなかった。
原作は映画を観た後に当然読んだが、予想はしていたが映画のような劇的なドラマではなく最後まで読んでいない。
私が初めて見たのは、VHSテープで、1988年頃である。その時、私はその映画のことを知らなかった。ある人にすすめられて観た。
殺人事件が描かれているのだが、映画は犯人探しというより、人を殺すということに至った背景や動機(それも心情的な)などが描かれ、「犯人」を犯罪者とし悪人としてとらえそれを憎むなどという感情は観た人は抱かないだろう。
「砂の器」という題名は、殺人を犯した男の人生がそれのようにもろくはかないものであったというような、ある意味男の人生を批判するような意味があるように思う。しかし映画では先ほど言ったように男を殺人者として裁くような描き方はまったくされていない。
圧巻なのは、男の犯行であることが刑事によってつきとめられて、逮捕状を請求するために説明する場面とそこに重なるコンサートと男の人生の回想シーンである。
男の戸籍が偽装されていること、そして男の本当の生い立ちが説明される。しかし「想像するしかない」というセリフがあるが緻密な論理による推理よりもその「想像」で描かれるなんの証拠もない回想シーンこそがこの映画のクライマックスでありテーマとなっている。
何度か観ているが、今回は初めて見たときの自分の人生のことを思い出すなどしたこともあって今まで見た中で一番泣けた。
そして、あまりに心を打つストーリーなので作り話ではなく実際にこういう事件があったのではないか?と思ったがどうやら実話ではないようである。
この映画は音楽や推理小説という原作をドラマに大胆に再構成しているところなどに感心するのだが、各シーンの撮り方もとても丁寧で出演者も豪華でどうしてこんなに気合を入れて撮ったのだろうと思った。