2008/09/18

瓜田純士 「ドブネズミのバラード」

今年の3月だったろうか。新宿である男が金属バットを持った集団に殴り殺された。私はそのニュースをインターネットで知ったのだが、なじみのある新宿でそんな事件が起こったことに驚いて、被害者の安否が気になっていた。数日後被害者は亡くなったのだが、彼はある世界の有名人であり、その交遊は芸能界にまで広まっているとして、現在テレビなどで大活躍の芸能人の名前がインターネットで話題になっていた。そのような情報を読んでいるうちに知ったのが、この本の作者、瓜田純士であった。

彼はブログを書いていて、私が知ったときにはすでに毎日20万ものアクセスがあるとのことだった。なんでも東京を制覇しただのブラックエンペラーの総長の息子だの小指がないだの全身イレズミだらけだの、クスリと拳銃所持で捕まって出てきたばかりだの、とんでもない男だというので、私は彼のブログや2ちゃんねるのスレッドなどを読みあさった。

その後、私は彼が出場したアウトサイダー第一回大会の動画を購入した。J-Waveに出演した番組は録音した。アウトサイダー第二回はディファ有明へ見に行った。短編映画のブルーベリーも購入して観た。ブログはもちろん、一日10回くらい更新を確認しながら読んでいる。「バラード」のことは、発売されるずっと前から知っていて、当然買うつもりだった。だが、なぜか発売後しばらくは買う気にならなかった。そして、今日、仕事の帰りに家の近所の本屋においてあって、買った。

彼の経験した内容の、おそらく、半分も書けていないのではないだろうか。しかし、この本と、ブログと、ブルーベリーと、噂話を総合すると、2年だか3年で刑務所を出られてよかったな、というような人生だったと思う。ただ、刑務所内のコンクールで優勝したという短編はとてもよかった。これは事実ではなく、だいぶ脚色した話のようだが、その方がよかった。自分の血なまぐさい経験を売り物にするより、こういう「作り話」の方が、面白いと思う。

実は私は、安藤昇、花形敬、ゴッドファーザー、ジアンカーナなど、ヤクザとかアウトローものが大好きである。でも、今まで見てきたのは全部、自分より年上の、昔の話である。ところが瓜田氏は、私より一回りも下のアンちゃんだ。そんな彼が拳銃だのコカインだの刑務所だのヤクザだのという世界に生きて、もうたくさんだと言っている。ブログではいまどきのアンちゃんのような軽快なギャグをとばして微笑ませてくれる。そこが複雑なところである。