2011/05/01

From fairest creatures we desire increase

これはシェークスピアのソネット集の最初のソネットからとった。私が初めてソネットを読んだのは確か浪人生のときで、岩波文庫の翻訳だった。英詩なんか翻訳で読んでもしかたがないとは思ったが、わたしはかなり胸をゆさぶられたのを覚えている。ほかの外国語の詩の翻訳で感動したのはゲーテのいくつかとオネーギン(プーシキン)くらいだ。

そして大学に入学し大学のすぐそばにある古本屋で英語のソネット集を買った。最初に長い解説があるが読み飛ばして最初に出くわしたのがこのフレーズである。

From fairest creatures we desire increase,

特に難しい単語は出てこないが、私は理解に戸惑った。訳文では、「美しい被造物こそ我々は増えて欲しいと願う」というように訳されている。しかし、desire A from B などという言い方があるのだろうか?そして from が、そのような「物事の優先順序の最初」というような意味で使われるだろうか?それまで受験勉強で習った英文には出てこなかったし、その後今までもお目にかかったことがない。英文を読む機会とくに英詩などを読むことはあまりなかったが。また、ソネット全体について、子孫を残すとかいうのがなんだか生々しいというか、即物的というか、少し奇妙に感じてもいた。「早く結婚して子孫を残しなさい」という内容の詩が続けてでてくる。

昨日くらいに、新解釈を思いついた。
「美しい被造物を源として我々は増えようという衝動を抱く」
というような意味ではないだろうか。fromというのは、desireが湧き出る源のことを言っているのだ。
つまり、fairest creatures というのはこのソネットが語られている美男子を含めて、「増えて欲しい被造物」というだけの意味ではなく、その美しい被造物を源として、つまり見たり、触れたり、話したりすることにより、子孫繁栄の欲望が湧き出る、というような意味。ある被造物について客観的に見てそれが増えて欲しいと願うのではなく、みずからが増える衝動を抱くという意味・・・

それにしても、美しい青年に恋することをすすめるのは詩らしい主題だが、普通それを「子孫繁栄」には結び付けないよね?