2007/09/09

松田聖子

なぜか急に聴きたくなってbibleというベスト盤を買ってきた。
「裸足の季節」というのがデビュー曲だったと思う。これは化粧品のCMソングだったのだが、松田聖子は別に鳴り物入りでデビューしたわけでもなかった。まあ売り出す側にしては鳴り物入りだったのかもしれないが。

すばらしいボーカルである。過去にも、そして彼女以降にも、こんなボーカリストはいない。どこがいいのか。まず声量がある。つやのある声。声を張った後にちょっと声が軽く裏返るみたいなアクセント。「青い珊瑚礁」の、「南のー風に乗って」の、「のー」の後のところである。

今も聴いているがもう涙が出そうである。初めて松田聖子を見たのは、当時毎週見ていた木曜夜九時のザ・ベストテンである。久米宏と黒柳徹子という今ではありえない司会。松田聖子はたしかベストテン入りする前に、注目歌手として登場したのではなかったっけ。CMで声はずっと聴いていてどんなかわいいコなんだろうと楽しみにしていたのだが、今で言う「引く」くらいにがっかりした記憶がある。「bible」のブックレットに載っている顔はもうまったく別人である。整形しようがどんな化粧しようが勝手だが、この顔は私の知っている松田聖子ではない。

4曲目から財津和夫。そして大滝詠一。このころにはもう貫禄十分である。そして「赤いスイートピー」でユーミンに曲を書かせた。このときに歌手として天下を取ったといっていいだろう。

しかし当時は気づかなかったのだが、今回聞きなおしてみると、「風立ちぬ」の頃にはもう声が変わってしまっている。タバコをすい始めたんじゃないだろうか。もしくはスケジュールがハードすぎて喉をつぶした。ハスキーっぽい声になっている。
「夏の扉」あたりからその兆候が見られるがこのときは技術でうまくごまかしている。

でも全盛期だった中学高校の頃はそんなにすばらしい歌手だとは思わなかった。顔も、あけっぴろげな性格もあまり好きじゃなかった。色気もないし。

「瞳はダイヤモンド」くらいになると、もう今の歌い方とほとんど変わらない。モノマネをする人がやるのもこの頃の発声である。たぶん軽くハスキーで子供みたいな声をだすのは肉体の衰えに関係なくできるんだろう。

というわけで彼女の全盛期は3曲目まで。

たぶん、彼女に注目してデビューさせた人たちは「ロックンルージュ」とか歌ってた頃にはあーあ、こんな歌手になっちゃったかとがっかりしてたと思う。