2008/03/22

華麗なるギャッツビー The Great Gatsby



名前だけはなぜかいやというほど聞いたことがある。たしがギャツビーと言う名前の男性化粧品もあって、CMをよくやっていた。
movie+でやっていたので録画しておいた。あまり見る気にはならなかったがvistaの再インストール+SP1適用をする合間に見てみた。わたしは映画でもテレビでも本でも、ぱっと見の印象でどうしても受け付けないことがあるが、この映画は受け付けない雰囲気に満ちていた。しかしscreenplayがコッポラだったし、このスレのネタにと思って我慢して見てみようかと思った。ギャツビーが出てくるまでの俳優女優陣の魅力のないこと。ロバートレッドフォード以外はしょうもない役者ばかりである。今1時間半くらい経過しているがわたしの心は微動だにしていない。いったいどういう人間が、どういう人間のために作って、どういう人間が何を求めて見る映画なのか、まったく理解できない。登場人物の誰にも感情移入できない。絵もクローズアップが多くて安っぽいテレビドラマのようである。噴飯物といっても過言ではない。最後の交通事故からギャッツビーが殺されるあたりはもう滅茶苦茶で、結局最後は金持ち批判かよというくだらない映画である。星はマイナス100個!!

何がダメなのだろうか?語り手的な存在であるニックのせいではないかと思う。彼は透明な中立的な凡庸な人間なのだが、あまりにも客観的すぎる。彼に魅力がなさ過ぎるのでゴシップ記事を読んでいるような気分にさせられるのだ。

ギャツビーに対してあまりに私が批判的なのを怪しむ人がいるかもしれない。実はこの作品の原作は、私が尊敬するある人がけなしていたのだ。だから有名ではあっても今まで手をつけずに、つけられずにいたのだ。その有名な人とはJDサリンジャーである・・・と思い込んでいたのだがそれは大間違いで彼(ホールデン)も大好きだといっている。

でも、ホールデンではないにしても、だれかがギャツビーなんか、とけなしていたのは記憶にあったのだが、・・・思い出した。Dylanだ。

You've been with the professors
And they've all liked your looks
With great lawyers you have
Discussed lepers and crooks
You've been through all of
F. Scott Fitzgerald's books
You're very well read
It's well known

・・・でもこれも別にけなしてはいないのかな?

いろんなレビューなどを読んでいると映画が駄作だという人は多いが、原作のほうは誰もが認める名作といってよいようである。野崎孝と村上春樹という二人がライ麦とともに訳しているところを見ると、何か共通点があるのだろう。


駅から家に歩いて帰るときに考えた。ライ麦と、ギャツビーと、村上春樹の共通点を。みんな、浮かれた時代をすごした繊細なお坊ちゃん達じゃないのかと。ライ麦は終戦後だけど、戦勝国だから結構浮かれてたんじゃないか。尾崎豊もライ麦に感激したようで何かのPVに出てきた。彼もバブル期の人間である。

そして太宰治もそうなのではないか、と考えたのだが、彼はまた特殊に思える。私は彼は単なる感傷的な青年などではなく、もっと恐ろしい、暗い、悪意を持っていたように思う。生きた時代も浮かれていたどころかもっとも厳しくつらい時代だった。戦争中なのに酒と薬におぼれて作家などやっているなんてまともな神経じゃない。こう見てくると、やっぱり時代なんか関係ないのかなと思えてくる。太宰みたいな人間が実は普遍的なのではということは以前も書いた。

村上春樹については、ノーベル賞かとまで騒がれている作家であるのに、恥ずかしながら一冊も読んだことがない。買おうかなと彼のコーナー(もちろん文庫の)までは何度もいったことがあるが、タイトルをながめて、手にとって最初の1ページを読んでみても、どうしても読もうという気にならないのである。ノルウェイの森はあまりに有名なのでまず読むならこれかな、と思うのだが残念なことに上下に分かれている。私は複数冊にわかれた文庫本を買うのは非常に抵抗がある。本なんか1冊にまとまっていないと、うんざりしてしまう。カラマーゾフとか、白鯨とかは壮大なので気合を入れて全部かって読むぞ、と読んだが、村上春樹はなんだか軽薄で軟弱そうなのでそこまでして読むほどのものではないかな、と思ってしまう。ねじ巻き鳥クロニクルとか海辺のカフカとかいうタイトルも、激しく読む気を誘わない。

繰り返すがまったく読んでいないので私には彼のことを批判する資格はない。軽薄・軟弱とかいうのも、私の先入観にすぎない。ギャツビーもなんどか開いて読んでみようかなと思ったことがないではないが、冒頭だけ読んでどうも文体が鼻につく。

とりあえず帰り道に本屋へ寄って、野崎孝訳の文庫を買ってきた。青空文庫でも読めるのだが、やっぱり本は縦書きで紙に印刷したものでないと。