2011/04/24

夏目漱石 「我輩は猫である」

やっと読み終わった。果たして一体この小説を全部読んだ日本人が何人いるだろうか?少なくとも中学生や高校生が読むような、読めるような本ではない。オトナの本である。私は半分くらい読んだときに、この小説に漱石のすべてがあり、これが漱石の最高傑作であると思った。


猫が語り手になっており、猫自体の行動や意見なども描かれるのだが、終盤は猫はほとんど登場せず、クシャミとその家族や友人達の会話が延々と続くようになる。そして最後、クシャミが本音に近いようなことを述べた後、猫はビールを飲んで水の入ったカメに落ちて死んでしまう。

夏目漱石は非常に律儀な、科学者のような人で、客観的な第三者が描写するようなことができず、猫という語り手を必要としたのではないか。その猫はこの作品中で死ぬ。そして彼は他の小説家と同じように、神のような視点をもった何者かに描写させるようになったのである。