2010/06/19

リングにかけろ

について書いたことあっただろうか。
私の人生のバイブルといってもいいこの漫画について。

リングにかけろの漫画史における位置は非常に重要である。
この作品は、「スポ根」と呼ばれていたジャンルがファンタジーへ移行する転換期の作品である。
リングにかけろが終わる頃始まったのが、ドラゴンボール、北斗の拳という伝説的な名作である(実は私はほとんど読んでいないのだが一般的な認知度において)。

梶原一騎が確立したスポ根ものがマンネリ化したところで、
もはや現実世界とは一線を隠した世界でのバトルが始まった、それがリングにかけろであったのである。

作者の談によると竜児という主人公の名前、幼児は泣き虫だったこと、姉に厳しく育てられる事などは「竜馬が行く」の影響らしい。
しかしやはりボクシング漫画であるのであしたのジョーの影響を強く受けている事は間違いない。特に最初の剣崎との試合は少年院での力石とジョーの試合をパクっているといわれてもしかたがないだろう。

そう、リンかけも最初はスポ根だったのだ。
それが途中から脱皮するかのように変化していく。
アストロ球団の影響もあったかもしれない。

リンかけは単行本で25巻ある。もちろん買って全巻揃えた。当時はジャンプを毎週買っていて、単行本の発売を知ると本屋に電話して予約して取りおきしてもらっていた。集め始めた時2巻まででてたかな?なので最初は初版じゃないけど、その後はみんな初版。13巻だけ予約をし忘れて初版じゃなかった。予約しないと売り切れてしまうくらい人気だったんだよ、当時は。

おおざっぱに区切ると以下のようになる。

上京編
都大会
全国大会(チャンピオンカーニバル)
日米戦
影道
世界大会
ギリシア12神
阿修羅
プロ編

竜児がブーメランフックを会得するのは全国大会が始まる前である。
左ジャブと右ストレートしか知らなかった竜児に教えた次のパンチが左フックだったのだが、竜児はその左フックを打つときにこぶしをひねるというクセがあり、それがブーメランフックとなったのである。
しかし、ブーメランフックの威力はすさまじく、相手のランニングシャツが切り裂かれてしまうほどなのである。たんなるコークスクリューブローでは説明がつかない。しかし車田正美はブーメランフックはコークスクリューブローである、という以外の釈明を一切していない。
そして、コークスクリューブローというのもあしたのジョーからの「オマージュ」である。

単なるコークスクリューブローを「ブーメランフック」と名づけてスーパーブローに仕立て上げたこと、これが車田の革新であった。
しかしこの手法はアストロ球団のジャコビニ流星打法とかの影響であろう。

全国大会の決勝では河合武士と闘うのだが、彼はアッパーカットを得意とするボクサーで、今思えばここにも力石とジョーの影響が見える。
おそらく作者自身もあしたのジョーの二番煎じであるという意識はあったはずだ。

ここで憎いのが、主人公のライバルである剣崎が、左手を負傷して全国大会に出場しない、という設定である。これは作者が後先考えずに都大会で剣崎の左手をボロボロにしてしまっただけなのかもしれないが・・・

竜児のブーメランフックの次にスーパーブローを披露したのは支那虎のローリングサンダーである。神業的ディフェンス、右手が不自由で左手一本で闘うボクサー。ありえなさすぎる設定。たしか0.1秒間に3発。スペシャルでは0.01秒間に5発だったか?

日米決戦で剣崎が復活。
世界大会で5人がスーパーブローを持つ。
剣崎だけはドイツ戦まで温存。本当は決勝戦までとっておこうと思ったが
準決勝でスコルピオンに対して初披露して代々木オリンピックスタジアムのガラスを突き破って場外に吹ッ飛ばす。

私は日本人が欧米人を蔑称する「毛唐」という言葉をリンかけでおぼえた。

決勝:ギリシア
準決勝:ドイツ
準々決勝:フランス
その前:イタリア

こんな感じだったかな。
フランス戦の時には剣崎以外はスーパーブローを用意していたはず。

もともと少年ジャンプの対象読者層は小学生から中学生であった。
竜児も中学生だった。なんと、プロ入り前までのすべては、
中学生の時のハナシなのである。
しかも都大会やら全国大会なら3回あるはずなのだが、1回しかでてこない。
「あんまり強すぎるから出場禁止になった」なんていういい訳が
阿修羅編開始時にでてくるが読者としてはもう、そんなこと、どうでもよかった。

18歳にならないと取得できないプロのライセンスを特例で取得した剣崎。
リンかけだからまあそれくらいなら驚かない。
しかし車田氏がただものでなかったのは、そのデビュー戦が世界タイトルマッチだと言う事。多分現実にはありえない。大財閥の御曹司だからということになってたけど。
とどめをさしたのがチャンピオンの名前、ジーザス・クライスト。
私はそれをある本屋で立ち読みしたのだが、その時のことはよーく覚えている。
立ち読みしているのに人目もはばからず笑ったのだ。くだらないとかいうのではない、自分でもなんでわらってるんだろって不思議におもったけど、ワラってしまったのだ。

私がリンかけの数々の死闘のなかでベストだと譲らないのが、
この剣崎のデビュー戦にして世界タイトルを奪取した試合である。
この試合のときはジャンプも特別扱いで、2週連続巻頭カラーというたしか前代未聞の扱いだったのである。

世界大会の後くらいからは、もう、詩である。
スポーツとか、青春とか、そんなものを超越した、詩である。

全巻入手した。久しぶりに読むがやっぱりもう頭の中にしみついていてとてもじっくり読む気になれないが、名場面はやっぱり素晴らしい。都大会の決勝で、剣崎は竜が放った渾身の右にあわせたカウンターの左でどこかがブチ切れた。そして渡米する。アメリカでケンカしたときは右腕一本で、治療を終えて帰国後の初戦では負傷が癒えた左手一本で相手を倒す。竜虎の激突は都大会以降は最後の世界タイトル戦までない。その試合では、お互いのスーパーブローの相打ちで、剣崎は右腕、竜は左腕を壊す。竜二のスーパーブローはずっと左手だったので、その時点で皆ファントムを残す剣崎が勝ったと思ったのだが竜二はレインボーというスーパーブローを会得していた。結局竜二が最後に勝利をつかんだのは右腕だったのである。あれだけ左を制するものはといっておきながら、結局最後世界を制したのは右であった。竜二というのはもう透明なくらいに無性格である。あんなに無性格な主人公もめずらしい。でも、そこがリンかけの成功の大きな要因の一つであったと思う。主人公が個性的な作品というのは、作者も読者も主人公自体に思い入れが強すぎてしまって作品全体としては破綻しがちな傾向があるように思う。個性的な人物を描くときには、主人公にしてはならない。

竜は努力家として描かれていたが、最後の最後にもしかして剣崎を超える天才なんじゃないかということになる。

今回初めて感じたことだが、この漫画には少女マンガのような匂いを感じる。車田はオトコ臭いことを主張しているようだが、感覚は女性的なものがある。

4巻は泣ける。竜が菊のいいつけを破ってパワーリストをはずしてしまい右こぶしをケガするのだが顧問のセンセが聖華学院との練習試合を承諾してしまって竜は断りきれずに試合に臨む。ん?待てよ。

この試合でセンセは男子の一諾だのなんだの言うのだが、そもそもあんたが適当に試合を引き受けたからこんなことになったんじゃないのか?

今16巻読んでみたんだけど、この第一部の終わり方はちょっとひどいな。もうリンかけにあきちゃってたのかな。最後の竜とアポロンの試合は最後アポロンを場外に吹っ飛ばすんだけど竜も倒れてるんだよね。ダブルノックダウンじゃないのか?より遠くに飛ばしたほうが勝ちなのかよって笑ってしまった。

リンかけの数々の名シーンのひとつ。
剣崎が左腕を怪我してアメリカへ治療に行ったときに、白人といざこざをおこす。
きっかけはなんだったか忘れたが、剣崎がお前なんか右手一本で倒せると言うと、
白人は笑って人差し指を突き出し、1分で倒してみせる、と言った。

すると剣崎は親指を立てた。
白人は「ジャップおとくいのサルマネか?」といって笑うと、剣崎は
「ワンセコンド」つまり、1秒で倒せると言った。

白人が逆上して殴りかかると剣崎はワンパンチで倒して予告を実現する。

その白人はどこから持ち出したのか拳銃を構える。

・・・そこへ誰かが現れたんだっとと思ったけど忘れた。

その渡米のさいに、空港で菊が送りに来る。

ガクランを来て左腕をつった剣崎に、菊がお守りを渡す。

剣崎は田舎モンの思いつく餞別だななどと鼻で笑うと、
菊は「いらないならいいよ、捨てっから」と言う。
すると剣崎はお守りを持った菊の腕をガシっとつかみ、菊を見つめながら
「俺が捨ててやるよ、アメリカのドブ川にな・・・」

と言ってお守りを奪い取る。

そして二人は別れ、二人とも滂沱の涙を流す・・・

そして剣崎はそのお守りを肌身はなさず持ち続け、後のギリシア12神との対決で、
相手のスーパーブローに吹き飛ばされてコーナーポストに胸を強打するが、そのお守りのおかげで一命を取りとめる。

剣崎は菊の弟である竜二とのタイトルマッチに敗れた後、菊と教会で結婚式をあげる・・・。

菊は後に麟童という男児を生む。
リングにかけろ2の主人公である。

・・・と、リンかけ2のことを調べていたら、後半に「竜童」とかいう俺のしらないキャラが登場したようだ。
絵を見ると完全に竜二だ。

竜二の隠し子か。さすが車田正美・・・。


なんせリンかけの続編だからそりゃあ俺も注目して、しかし2以外は興味が無いし一話なんか10秒くらいで読み終わるから立ち読みしたりマンガ喫茶で読んだりしていたのだが、1にくらべて絵も話も雑で、ファン達にも評価は低いようである。