2008/12/11

「漱石文明論集」

仕事の必要で長時間電車に乗ることになり、暇つぶしのために本を持っていくことにした。選んだのは岩波文庫の漱石文明論集である。「私の個人主義」「現代日本の開化」などが収められている。これらは明治44年頃の講演である。漱石は明治の年数が年齢と一致している。三島は昭和と。なので彼らが何歳のときかというのがすぐわかって便利だ。

「私の個人主義」では、漱石が文学とは何かということについてとても悩んだ末に、結局それは自分でどういうものかを考えるしかないと思った、とある。それが彼を文豪たらしめた瞬間であろう。彼は、自分が求めているものを誰も教えてくれないのはもちろん、持ってさえいないことに気づいた。つまり、自分があたらしく何かを築き上げようと考えたのである。これは大変なことである。胃が痛くなるのも当然である。

私も今、自分が求めているものを誰も与えてくれないことに悩んでいる。それは決して自分が甘えているのではなく、現存するものの中には私の求めるものがないのである。となれば、そう、私が築き上げるしかない。