2009/03/22

山本周五郎 「赤ひげ診療譚」

山本周五郎の3冊目。前作2冊よりは、普通の小説らしく、テレビの時代劇を思わせるような展開もあった。医者とその弟子となると、「破れ傘刀宗」のようだ。実際数人の相手を叩きのめす場面が出てくる。刀で斬りこそしないが。

共通の舞台でのオムニバス的な構造と、ダメな奴、狂った奴が多く登場するのは、「青べか」や「季節のない街」と同じ。これがなかったら、ほんとにただの時代劇の脚本になっていただろう。

頑固で情熱家で地位や名誉を求めないという、黒澤明が好きそうな話だ。映画は見ていないのだが、途中から去定はすっかり三船敏郎の姿をとってしまった。

この作品は、ちょっときれい過ぎるというか、お説教臭いというか、時代劇や映画の脚本っぽいのが物足りない。