2008/12/09

山本周五郎 「季節のない街」



「季節のない街」を読み終わった。
山本周五郎の作品を今頃になって読んだ事を後悔している。
せめて30歳くらいで読んでおきたかった。
兄が「さぶ」を持っていて、ちょっと読んでみようかなと手に取ったことはあったのだが。

人物の存在感というか、リアリティというか、現実感というか、
自然さというか、頭の中での言葉遊びではない、人を描いた、
小説らしい小説、剛速球のストレートな感じだ。

こういう世界から遠ざかっていた。
子供の頃、それも小学校へも行っていなかった、
近所の3歳から10歳くらいのいろんな子供達と
ワイワイ遊んでいた頃のことを思い出す。
土曜日や日曜日に近所の家で遊んでいてお昼ご飯をごちそうになると
母に怒られた。
ごちそうする母もそれをしかる母もいい母である。
私はなぜ怒られたのかよくわからなかったが・・・。

そこから引っ越して、近所づきあいがあまりない、
今住んでいる場所に来てからは、なんだか寒々しい日々が続いた。
テレビやマンガやゲームで遊ぶようになり、
やがてひとりを好むようになって、
社会人になってからは仕事が終わればほとんど人と会話もしない・・・
たまるストレスと不安・・・

それは私に限ったことではないだろう。
この街のような、感情をむき出して愛憎にまみれた、
一見汚く醜いような人間模様は、今すっかりなくなってしまい、
近所で子供が殺されても誰も気づかず、
すぐそばに住んでいながら顔も知らないような社会になった。

生活は便利に豊かになって食べ物にも困らないし
一年中エアコンが稼動して快適にすごせる・・・
でも、そんなのくそくらえだ。

感動したのでヤマシュウの文庫を4冊注文した。