読み終わった。
7章では、ペーペルコルンという男が登場する。
彼はショーシャとともにベルクホーフに現れる。
ハンスは彼が立派な人物であるというのだが、何が立派なのかよくわからない。
そして彼は自殺し、ショーシャは再び去る。
この後は少し緊張感が失われているように感じる。
ヨーアヒムが死に、ショーシャも去った。
あとはセテムブリーニとナフタの論争くらいしか語るべきものはない・・・・
と思ったら、この二人の論争は決闘にまで発展してしまい、
セテムブリーニは虚空を撃ち、ナフタは自分の頭を撃ち抜く。
ナフタとセテムブリーニの論争は、よくわからないところもあったが一番興奮した場面だった。
終盤はなんだかどたばたして、音楽についての章やオカルト的な章などは、
無理やり突っ込んだ観がある。
三島由紀夫の豊穣の海の第四巻のような、「マンガみたい」な感じだ。
この作品は第一次大戦の勃発によって執筆が中断し、戦後完成させたものだそうだ。
そのせいもあるだろう。
前半の緊張感、抑制された雰囲気がだんだんなくなっていくのが少し興ざめした。
トーマス・マンは、ハンス・カストルプのような、悪い人間ではないが八方美人なお坊ちゃんなのではないかと思う。でも、誠実で、いい奴だ。
そしてこの小説を「教養小説」などと呼ぶことはやっぱりできない。
岩波文庫の解説にも、「アイロニーをもってその形式を踏襲した」などと書いてあった。
文学、政治、宗教、医学、生物学、数学、音楽、体育、オカルト・・・
たいした教養である・・・。
登山のような読書体験であった。