2012/11/12

「戦争と平和」 (2) 第一巻 第二編

第一編と第二編は、ほとんど別の物語のようである。第二編は戦争の話。相手はフランス軍である。客観的な描写が続く。従軍している人々に緊張感はなく、使命感や愛国心なども見えず、仕事としてしかたなくやっている。実際の戦争はそういうものなのだろう。トルストイは従軍の経験も豊富なようだ。交戦になるとさすがに緊張したシーンになるが、その緊張も、戦争に意義を見出し国のために戦うといった緊張ではない。ただひたすら自分の命を守りそのために敵を倒すのだ。

第一編の社交場でのやりとりは全く縁がなく理解に苦しんだが、戦争についてもまた縁がない。でも、こちらの方がリアリティのようなものを感じられた。と言っても、大勢の登場人物がしっかり把握しきれず、何人かの人がわいわいがやがややってんな、と遠くから見ているような感じだ。

そんな読み方でいいんじゃないだろうか。とりあえず。第二編を読み始めたときはもうやめようかとさえ思ったのだが、戦闘シーンになって引き込まれた。戦闘シーンといってもそんなに勇壮なものではない、みっともないとさえ言えるようなシーンだったが。

「戦争と平和」なんて、凡庸なタイトルだなと、若い頃は思っていた。戦争に批判的な姿勢は感じられるが、安直な反戦文学などではない。もっぱら「ボナパルト」と呼ばれるナポレオンについては、登場人物達のリアルな心情の変化や行動のはるか上に、まるで「本当に実在するのか」とさえ感じる程に現実感なく流れている。このナポレオンの存在が、この小説を引っ張っている。